タンザニア

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何飲む?

高校を卒業したばかりの俺にマスターはどの珈琲を飲むのか聞いてきた。豆の種類など分かるはずもなく、正直に聞くとどんな珈琲が飲みたいのか言えと言う。

あまりあっさりしてないものが飲みたい。

目の前に出されたのはタンザニアという豆の珈琲だった。

ミルクも砂糖も入れず飲んでみると透き通った珈琲の苦味と軽い酸味が口の中に広がった。喉を通り過ぎた後も珈琲の香りが消えない。なるほど珈琲って美味いなと思った。

幾度となく通ううちに珈琲屋のマスターは夢を売る商売だと思うようになった。マスターの話はいつも厭世的で何処と無く現実味を持っていなかった。そのくせ世の中なんとかなるということを身を持って体現している楽天家のようなところもあり、そんな彼の話を聞きに来る客も少なくないようだった。

あれから色々あった、月日も流れた。けれどあの初めての珈琲の味は今もハッキリと残っている。

ありがとうマスター。遠い異国の地であなたの死を受け止めている。今でもあなたを思い出す度にあの珈琲の記憶が蘇るよ。

叔父の淹れる珈琲を超えるものはまだ飲んだことが無い。

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