三人しか居ない親友のうち二人の友人家族と一緒にキッザニアに行ってきた。オーストラリアにそれはないし帰りには月島もんじゃにありつける。女性陣は子供達とともに館内へ、男達は入場料もかかることだし初めてというわけでもないので、外をプラプラしていろというお達しが下った。最高である。ショッピングモール内にあるということもあり、ワイワイ三人でぶらぶら買い物でもしようかと企んでいた。

「コンビニどこっすかね」
朝の八時四十五分、入場口で家族と別れたあとに男三人はコンビニを探していた。その道を渡って右側にあると教えられたデイリーヤマザキに入る。缶ビールを3缶、ストロングなんたらというロング缶を6缶、菓子を少々。店を出ると親友二人はスグ脇のパン屋の外にあるカフェテラスは駄目だろうかと話している。流石に駄目だろう、パン屋のテーブルと椅子だ。親友たちはバカなのである。男三人でキッザニアのある建物まで戻ると、内側から続く中庭を跳ね橋に向かって歩いた。

一番奥の喫煙スペースの脇にある5メートル四方ほどのコンクリートの上で酒盛りが始まった。乾杯し近況を語る。亡くなった親戚の話や、仕事の話、子供の話、1時間もしないうちにあっという間に酒はなくなった。
「大人のキッザニアだな」調子に乗ってそんな軽口も出たりした。酒も無くなったことだし買い物に行こうということになる。俺はBEAMS系のところもあるし、どこを見ようかと思っていた。甘かった。二人は大の買い物嫌いで、大型ショッピングモールにある服屋になんて、つゆほどの関心もなかったのだ。キッザニアの下には洒落たスーパーがある。
最初から示し合わせていたような二人に連行される俺。お前と行ったシンガポールが懐かしいなどとたいして思ってなさそうな注釈が足されたタイガービールやワンカップに入った日本酒が次々とカゴに投げ込まれる。この時になってやっと今日は服を見る時間など無いことに気がついた。
鮮魚コーナーで一人が立ち止まった。そこには樽の中に生息する立派なホッキガイ。これお造りにしてくれます?などと店員に話しかけている。外じゃ牡蠣はひらけねーななどともう一人も言い出している。俺は魚介類がそんなに得意ではないが二人は大得意だ。遂にはアジまで捌いてもらえないかと交渉し始めた。
「キンメにしてくれ」
それがたった一つだけ通った俺のリクエストだった。さようなら服屋巡り、俺は人選を間違えたよ。また今度な。ヤマサのボトル醤油も放り込まれる。ワサビは鮮魚市場で頼んでかなり多めにゲットしたからそれでいい。奴らの物色は止まらない。買い物嫌いなんて嘘だと思う。俺はあまりにも暇なので「スーパーでお前の歓迎だと言われつつキンメを刺し身にしろとか牡蠣をこじ開けろとか叫んでる友人を二日酔いの眼て見ている」「それでは聞いてください。シャレオツなスーパーで無茶な注文をする友達最高!」などとやけくそで呟いたりしていた。
スーパーでの会計は八千いくらかだった。バカだと思う。
やっぱり俺達のキッザニアはあのコンクリートの上だった。俺はビールの栓をライターでこじ開ける。キンメは全然生臭くなくて最高だった。沢の鶴を流し込む。曇り空の下、こんな所でワンカップを飲んでいるなんて朝出る時には思いもしなかった。シャレオツなららぽーとを穢してしまった。途中水上バスのHIMIKOが通り、十数年前からあのデザインだという衝撃の事実を知る。今でも全然新しい未来的なデザインだなどと盛り上がり、キッザニアの終了を知らせる女性陣からの携帯電話を受けたときには立派な三人の酔っぱらいが誕生していた。

奥さん達は今日これから月島もんじゃに行くのはちょっときついと裁定を下した。ものすごく歩いたので疲れた。さらに男どもがこれではまったく役に立たないと。おっしゃるとおりで至極当然の判断だと思う。これからお泊りでさっさと別の友人宅に遊びに行きたい子供達からは反対など無かった。男達だけが締めのもんじゃを惜しがっている。子供と一家族に別れを告げ、俺が泊まらせてもらっている家に帰る途中で締めのラーメンを食べた。親友は家に着くなりさっさと風呂に入って眠ってしまった。
俺はマツコデラックスのテレビを見たり、いつもどおりちびちびとビールを飲んで時計を見ると12時だった。そして少し寝て目がさめてしまい起きたら夜中の3時。皆が寝ているし丁度良いのでこれを書いている。

時計を見て気が付いた。なんだか違和感があると思ったらさ。そうか友よ、時差が無えんだよ。時差が無え。飲んだり笑ったりした時にさ、時計を見ても時差が無えんだよ。

小さいことだけれど俺にとっては大きな発見だ。
これが今日のおみやげだなと思った。