25歳の頃、京王線沿線に住んでいた。いろんな人に助けてもらったり善意を施してもらたんだけど、たまに思い出すのが駅の売店だ。JRじゃないからキオスクじゃないとおもう。
俺はなぜか毎朝トマトジュースを飲むというのが日課で、今はあるかわからないけれどキリンのトマトジュースが一番好きだった。見かけた人がいたら飲んでみて欲しい。んまい。
毎朝タバコとトマトジュースを買っているうちに一人の売店のおばちゃんに話しかけられた。なんの仕事をしているのかと。いやー人生の裏街道走っててやっと最近会社員始めたんですよみたいなことを言ったのかな。まぁホントだったし、スーツもちょっとギクシャク見えていたと思う。そしたらその日から他のお客さんがいない時にこっそりトマトジュースをくれるようになった。
悪いからいいといったのだけれど「いいから。ちゃんとお金は私が払うから大丈夫。頑張ってこい」などと言われた。俺は本当に馬鹿だったのでありがとうございます。って言いつつちゃっかり奢ってもらってしまっていた。勿論他のお客さんが居る時はお金を払って買うんだけれど、結構な回数奢ってもらってしまっていたと思う。半年くらい奢ってもらったりしたんじゃなかろうか。そんなある日「あー良かった。会えた」と言われた。その日が最終日だというのだ。えーまじかよ。そっかー。話の中で12時までで今までの売店での仕事が終わるのだと聞いた「じゃぁ行ってらっしゃい」「行ってきます」他にお客さんが居るのにもかかわらずおばちゃんは堂々とトマトジュースを俺にくれた。俺も最後かぁこれがなんて思いながら貰った。
京王線には何箇所か急行への乗り換え駅がある。乗換駅は家賃が高いのでそこには住めなかったのだけれどその日の俺は自信満々で乗り換え駅の改札を出ていた。
「ハイ。ちょっと熱と下痢がひどくて途中まで来たんですがすみません帰ります」会社に電話した俺はそのまま喫茶店でちょっとコーヒーを飲み、開店早々のパチンコ屋へ行って時間を潰した。だってクズだから。
12時前に俺は地元駅のホームにたっていた。パチンコでしっかり負けたので、クソ安い花束を持って。今思うとすげーカッコ悪い。サラリーマンが昼に花束を持って立つ。シュールだ。女の人に花束を買ったのなんて初めてだったんじゃないかなと思う。今思えばおばちゃんにバレてたよなぁサボったの。でも俺は自分の中で十分正当な理由で会社を休んだので自信満々、気分上々だった。
最後の仕事を終えたおばちゃんに声をかけ、びっくりしているところに花を渡したらおばちゃんはちょっと泣いてしまった。そんで俺は缶コーヒーを、おばちゃんにお茶のペットボトルを初めておごって、ちょっとだけベンチで話した。奢ってくれていたのは俺が息子さんに見えていたからだったんだそうだ。自分の息子も遠くで同じように頑張ってるんだろうと思うと何かしてやりたいと思ったと。それに甘えていた自分がちょっと申し訳なかった。10年勤務したとか言ってたのかな。詳細は忘れてしまったのだけれど、自分なりに感謝の意は伝えられたかなと思う。

もうあれから15年位経ってしまったけど元気で居るのかなぁ。仲良くなったばかりの友達にこの話を話すと最初絶対嘘だと言われる。でそのうちお前じゃしょーがねーかって言われる。いつまでもお前じゃしょーがねーかって言われるように生きていけたらいいと思うけれど、もういい年だしそれもなぁと思ったりする。

トマトジュースが飲みたい。