どうして此処にこんな場所があるのだろう。
時々フッと入り込む、街なかに空いたサイレントスポット。
そこから見る景色には少しセピア色がかかっていて、時間がゆっくり進んでいるように見える。
珈琲を片手に歩いている人、あの人はきっと忙しいんだろうな。
女子高生が笑いながら走っている、きっと最高に楽しいんだろうな。
ここの中はこんなにゆったりしているのに世界はやっぱり回っている。
あと少ししたらここを出ないといけない。
もう少しだけここに居たい。

カメラを首に下げながら、あの娘は何かを探してる。
一瞬頭に浮かぶのは、この場所を探しているのかも知れないという疑問。
ここから声をかけてしまったら、なんだかここが壊れてしまうような気がした。
きっと世界中にこんな場所があって、誰かがそこから外を見ている。
早く出ようとしたり、感慨にふけったり、狐につままれたようになっている。
頭の中に薄っすらと、何かの音が流れているのだけれど、何の音だかちっとも判らない。
きっともうすぐ忘れてしまうのだろう。
名もない音よありがとう。

さよなら、さよなら。この場所よ。
バイバイ、バイバイいつかまた。
少しせつない気もするけれど、きっとそのうち、いつかまた。

そんな事を思いながら喧騒の中に戻っていく。
振り返るとそこにはもう何もなかった。