重みある人の言葉も数キロバイト

ネットでも血は流れるし人も死ぬ

演じても変わらぬ人格それ本性

深淵を覗く鏡が手の中にある

そんな風に優しい人になりたかった

野に放つエンターキーでたった今

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 毎日軽やかにジョークの一つでも言えれば良いのだろうけれど、それほど器用な人間ではない。良いことばかりの日常でもない。晴れる日もあれば雨の日もある。
 自分にとってインターネットの空間はいつも凪いでいる。例え現実世界のことであっても何処か違う世界の事のように見えるのだ。

 紙とインクが持つ質量が重さであるのに対して電子情報のそれが容量だからかもしれない。重みある人の言葉も数キロバイトにしか過ぎない。そのくせ読む人によってはそれ以上の重さを感じてしまう。ネットでも血は流れるし人も死ぬ。

 不器用に現実と繋がり、まるでゆらりと独立した世界のように錯覚させるインターネット。せめてそんな世界でだけは他人として振る舞いたいと演じてみても、変わらぬ人格にこれが本性なのかと気付いたりする。そう考えるとスマートフォンを持つということは深淵を覗く鏡が手の中にあるということなのかもしれない。

 ネットの世界は今日も自分の生きる世界とそれほど離れていないところに見えている。だから時々その住人に対して親近感を抱いてしまう。そんな風に優しい人になりたかった、自分はそうはなれなかったと。少し途方に暮れながらテキストを書いている。それでもテキストを書いていこうと思っている。

 そんな言葉をインターネットの野に放つ、エンターキーでたった今。

#MVN