電車を待っている。朝とも昼とも言えない午前11時12分。電車がそろそろ来ることを告げる電光板を見ながら、電車は右から来るんだよな、などと考えている。

 右から来る電車は左に向かう。街を抜けてそのまた先へ。野を超え山を越え走っていくのだろう。

 一つ向こう側の線路を特急電車が駆け抜けていく。この電車は何処へ行くのだろう。頭の中をかき消すような音をたてながら特急電車が走り抜けた。自分が乗らない電車は何処かの誰かを乗せてそのまた何処かへ走っていく。

 右奥に自分が乗る電車が見えた。昼間なのにライトを点けている。ブレーキを掛けながらゆっくりと、駅のホームに滑り込んで来る。
 何処から何処までが自分の街なのだろう。たった3駅の為に電車に乗ろうとしている自分は今は一体何処にいるのだろう。

 電車が目の前に止まり、ずうっと開くのを我慢していたような音をたてながらドアが開いていく。足が勝手に動き出し、吸い込まれるように車内に乗り込む。時計は11時15分。

 ほんの少しの間しか開かないくせに、やっぱりずっと我慢していたかのような音を立てながら電車のドアが閉まっていく。慌てて車内での居場所を探す自分に苦笑する。

 そんな風な日常の風景。

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