あいつの作る歌はいつも訳がわからなかった。
パンクバンドの筈なのに悲しい歌なんてタイトルをつけたり、音は半分だけ聞けばいいなんて歌い出す。
きっと何かが欠けてるんだろうなと思って見てたよ。

「おい、ぱんく」なんて馴れ馴れしく呼びながら、こいつはいつかどっかに行っちゃうんだろうなぁっていつも思ってた。俺はあいつが大嫌いだったのかもしれないな。

これ『悲しい歌』のメモだけどあいつはこんなのを毎日、毎日、河原で書いてたんだ。同じ歌を少しずつチョットずつ違う歌詞でね。毎日毎日増えていく。俺達はいつもライブの時に、あいつがどれを歌うのか判らないんだ。その時の気分で変わるからさ。まるで馬鹿にされているようにも感じたよ。コーラスワークのしようが無いんだ。同じバンドのメンバーなのにさ。ぱんくのためだけに演奏しているんじゃないかって感じる時もあったよ。
客は歌詞なんて気にしちゃいなかった。所詮はパンクバンドだからね。でも違うんだよ。なんつぅか今日のぱんくは機嫌が悪いとか、今日のぱんくはなんか変だとかさ。判るんだよ。
あいつMCなんて全然しないのにな。

これ?いらないよ。他にも探せばどっかにある筈だから。
あいつは元気なの?あぁ、まだ会ってないのか。会うことがあったらよろしく言っといてよ。

ーーうん。じゃ。

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悲しい歌

悲しい歌を聞いた
左耳に残響、右耳に澄んだ音
僕達は全て半分にして生きていく
それが上手く押し殺すということ

寂しい歌を聞いた
左目に乾きを、右目には涙を
僕達は全て半分にして生きていく
それが上手くやり過ごすということ

気を抜いたら終わり、全部飲まれて終わり
そんなロープの上をゆらゆら揺れて歩いてく
立ち向かえと人は言う、ほっといてくれと笑う
乗せられる事はしない、とっくに懲り懲りなんだよ

尖る音の先っぽで、生きてることを感じてる
傾きそうになったって、そんなことは知るもんか

気を許したら終わり、全部飲まれて終わり
優しくされて落ち込んで、全部忘れて歩いてく
いいことあると人は言う、そんなの無いと僕は言う
騙されることはしない、とっくに諦めてんだよ

尖る音の先っぽで、心をくすぐって遊ぶ
心が赤くなったって、そんなことは知るもんか