でかい音がする。

おっ?
ブォンブォンブォブォンボ、ブォンブォンブォブォンボンボ、ブォーン。ブンブンブンブ、ブォンブォン。

いい感じの音だ。かなり遠くだな。誰だろあれ、いい音してんな。

えっ?
ブェンブェンブェーンブェーン。ブェンブェンブェンブェンブェブェーンブェーン。

ダサい。なんかださい。空気入りすぎだろあれ。なんか近所のガキが泣いてるみたいな音だ。気のせいかだんだん音が変わって聞こえてくるな。

う、
ブゥン、ブゥンー、ブゥーンヴゥーン。

ブンブンブブンブ、ブンブンブブンブ、ブンブンブブンブンブンブンブブンブブンブンブブンブンブンブンブブンブブンブンブブンブ、ブーン、ブンブーン。

また変わった。う段はなんかカッコいいな。なんでもいいけどアクセル吹かすのこいつうまいな。エギゾースト音がたまんねーな。うん、こーいうのがいいよ。こういうの。つまりなんだろなこのバイク。ケッツかな。誰だろうな。

い、
ウィーンウィンウィ。ウィーン、ウインウイ、ウィンウィンウィウィーん、ウィン、ウィン、ウィウィンイウィウィンうぃン、ゔゥィーーーーン。

うへー。チョロQかなんかか。い段はダメだろ。モーター?電気で走ってんのかこれ?ださい。クソださい。近いとすげーだめだなこのマフラー。ゔウイーンはなんか卑猥すぎる。

けどどんどん近づいてくるな。次はア段か。ヤバイな。嫌な予感しかしないな。絶対なんかヤバイやつだな。と思ったら急に音が静かになった。

「たかゆきー、しげるくん来たわよー」

まーじーでーー。
しげるくんかよ!まじか。そう言えば今日、人のバイク借りてくるって言ってたっけ。俺あれ乗るのか。ギェー。次はア段かよ。行きたくねぇよ。ちくしょー。本気か。なんか腹痛くなってきた。行きたくねーな。本当に行きたくねーな。にげてーな。でも来月祭りだしな。今夜はそれの話し合いだよな、行かないとだな。ギェー。

「行って…きまぁす…」

パステルピンクカウルのケッツー…。

しげるくん。これさー。音なんか変じゃない?サイコー?ヤザワ?変じゃないの?あっそー。いや、全然いいんだけどさ。俺これに2ケツ?う、うん。あっそー。わかった、わかった。ゲーセン前の駐車場までね。今日検問ないの?あっそー。駐車場でシルビアに乗せてもらえんの。うん、わかった。今日は寒いね。うん、いこか。

やばい。乗っただけで恥ずかしい。地獄に向かって走り出す。

あぁーーん。ヴ、あーん。アンアン。ウぁぁぁン、アンアン、ウァンゥンウヮンア、アン、アンアアンアアンアン、アーーーン、あぁぁぁんアーーーン。アン、アーン。

最っ悪だ。
顔から火が出ちまいそうだ。エギゾーストがエクスタシィ。みんなが笑ってる。対向車も笑ってる。ルールル、ルルッルーじゃねーや。

「しげるくーん。これさー。音やっぱり変じゃねー?なんかアンアン言ってねー?聞こえるー?しげるくーん!」

ダメだ。辛い。堪えられないし寒い。いやこの音がツライ、酷すぎる。浪漫ポルノってステッカーケツに貼ったの誰だよ!

あぁン、アァァン、アン、アァーーーン!アンアーーーン。アン、アーン。ヴォァーん。アンアン。ウぁぁぁン、アンアン、ウァンゥンウヮンア、アン、アンアアンアアンアン、アーーーン、あぁぁぁんアーーーン。アン、アーン。

しげるくんの返事が「あーん?」だけなもんだから余計ひどい。

「しげるくーん、おれやめるわ」
「あーん?」

「こんなかっこ悪いのひどいや」
「あーん?」

「族やめるっていってんの!」
「あーん?」

「エロビデオみたいで変だよこのバイク!」
「あーん?」

「そういえば貸してたビデオ返してよ!」
「あーん?」

「…。」
「あーん?」

「つぶ」
「あーん?」

「こし」
「あーん?」

「おくち」
「あーん?」

「トレビ」
「あーん?」

「大政奉還」
「あーん?」

さむい夜空の下、青春の音が響き渡っていた。
その日、何故かしげるくんにボコボコにされた。フルボッコだった。

俺、絶対悪くないと思う。