どうやら慣れない水に湯あたりをしてしまったらしい。夜風に当たるため少しだけ外へ出ることにした。

ひんやりとした空気を感じながら夜店の立ち並ぶ目抜き通りに出る。輪投げ、金魚掬い、綿飴屋。緩やかな下り坂の通りにはこじんまりとした屋台が並んでいる。小さな桃と白の提灯は何処かに泊まる宿泊客の足元をぽつぽつと照らす。人はまばらだが何処かホッとする街並み。空気が少しだけ生暖かくなった。何処かにあんず飴はないだろうか。

浴衣を着て楽しそうに笑う女性達の脇をすり抜ける。甘い香り、ほんのりと醤油の焦げた匂いをやり過ごすと裸電球に照らされるあんず飴の立ち並ぶ店を見つけた。

「これください」
綺麗に並べられたあんず飴と林檎飴。奥に見えるのは小瓶に入った水飴と短い割り箸。あんずを探していたというのに林檎の赤さにも惹かれてしまう。どうせ大きいものを選んでも食べ切れやしないのだ。一番小さなあんず飴をひとつ選んだ。

--懐かしい味がしますよ
そう言って渡されたあんずの艶。まだまだ続く提灯に引かれてもう少しだけ歩いてみることにする。乾いた射的の音が心地良い。飴はもう手元にあるというのに焼きとうもろこしの香りに誘惑される。少し先のなにやらキラキラするところに目をやるとどうやら風鈴屋のようだった。

吸い寄せられる店先。大小様々なガラス達が風を待ってキラキラ光っている。なんだか時折小さく揺れる茶色の短冊が身を捩る女性の身体のように見えてしまった。鼻の奥がツンと痛い。罪滅ぼしのつもりか、それとも罪作りのつもりなのか。それほど大きくは無く彩も光も控えめなものをひとつだけ買うことにする。

薄い紙で硝子のそれを包んでもらっている間、左の方を伺ってみる。提灯の灯りはもう少しだけ先へと続いているようだ。後ろから強めの風が吹いてきて店先の風鈴が一斉に鳴り出した。

夏はまだ終わらない。