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Ginzasur.com

活動報告

アバラハウス更新配信のご連絡

この記事の所要時間: 0 26

拙著「アバラハウス」の誤字部分を更新した物がAmazonから配信されるようになりました。

Kindleの場合、更新版をアップロードした後に報告フォームから該当箇所と内容について申告し、確認をしていただいた後に配信という手順になります。最大一週間程度かかるという連絡をいただいてから二日で更新していただきました。

お買い求めいただいていた皆様、お手数ですが更新の程よろしくお願い致します。

銀座
アバラハウス

 

誕生日

この記事の所要時間: 1 46

 九月六日、誕生日だから俺のためになんか書いてくれと友人が言い出した。いつも何かしら書いたりしているのだからそれ程無茶な願いでも無い気もするし、いや結構無茶だろうと思う自分もいる。だって我こそはキングオブ照れ屋。お題は『誕生日』が良いと言われた。誕生日について書こうと思う。

「誕生日はドンドン色褪せていく」そんな台詞を彼から聞くとは思わなかった。確かに10代、20代、30代と経ていつの間にかお互いに40代になってしまった。そして気付いたらもっと上の世代になって、頼みもしないのにどんどん死は近づいてくるのだろう。俺達は何処に生きる成長の糊代を落としてしまったのだろうか。年と共に成長するのは幾ばくかの雑学と生きる裏技、そして悲しみに耐える方法ばかりだ。俺が死んだら色々頼む、なんてことを今年も言われた。男が短命の家系らしく彼は後20年位で自分の寿命が来るものだと思っている。そんなこと言うなよ、で返す位が丁度良かったのかもしれないが、そんな言葉は出てこなかった。
「子供がまだ小さいんだからなるべく長生きしろよ」現実の言葉はいつも陳腐だ。

────
 ヤマザキくん、君はまた一つ歳を取っちまいやがりました。俺はこの日が来ると君がひとつ年上になってしまうのでタメ口を聞くのが少しだけ躊躇われてしまいとても嫌です。君は言いました「子供の成長を見ながら一緒に酒を呑んだり昔の話をできればいい、そして新しい音楽やカルチャーに触れられたらそれでいい、先に逝くだろうから其の後はよろしく」
なるほどこれは見方によってはたいそう有り難い言葉なのかもしれませんが、俺は欲張りなのでこんな言葉では全然満足できません。

だから千年生きましょう。
一万年では長過ぎます。
千年くらいが丁度良いです。
そんなこと無理だろうと他のやつに馬鹿にされたってかまやしません。
千年生きましょう。
そしてもう少しだけ一緒に旨い酒を飲みましょう。
────

後九百五十年位残っているんだったら、まだまだ笑って余裕で言える気がする。

──誕生日おめでとう。

猫の王

この記事の所要時間: 0 43

俺の飼い主は少しおかしい。
餌を持ってくるのがいつも遅い。
俺が寝ているのに触ってくる。
椅子を持ってくるから座ってやったのに騒ぐ。

舐めると変な声を出すくせに手を出す。
嫌だというのに風呂に入れようとする。
下僕のくせに引っ掻くと怒る。
俺のために物を買いすぎる。

俺の飼い主はとても弱い。
猫好きな人間は強いなどと言い出す。
たまに辛そうな顔でワシャワシャして来る。
俺をなんだと思っているのか。

やぁやぁ我こそは猫の王。
我儘は仕事、妥協などない。
何があっても傍若無人で在り続けなければならない。
其れこそが王に求められる資質だからだ。
さぁ飼い主よ、そこにひざまづけ。
すべからく今日も我を讃えよ。

そしてさっさと幸せになってしまえ。
我にもっと貢物を持ってくる為に。

イナバタラレバ

この記事の所要時間: 3 37
 ハロー皆さんこんにちは。お前だぁれ?って、まぁウサギなんですけどね。正直かったるいったらありゃしない。今日はあんまりにも自分について誤解が多いので「ウサギの主張」ってやつを頑張ってみたいと思います。

大体イナバって言葉が適当過ぎるんですよね。物置の会社名を聞くと俺を思い出したり、蟹缶を見ても連想しちゃう人が居るんじゃないかな、あれはタラバ。要はペットショップにでも行かないと中々見れないはずの生き物なのに身近に扱われ過ぎっていうか馴れ馴れしいっていうか。悲しいことに兎に角ウサギってやつは、雑に、不条理に扱われてるんだよと主張したい。兎に角だってそう。角なんて生えて無いし!
目が赤いせいでさぁ、可愛いって寄って来てくれても「うわっ、怖っ」とかよく言われるけれど失礼にも程があるよね。悪かったなぁ、こちとら毎日寝不足なんだよ!寂しいと死んじゃうとか言うのもさぁ、生き物皆同じっしょ!

さて、ぶっちゃけ皆さんはウサギって聞くとずる賢いとか悪戯好きだとかそんなイメージを持ってやしませんか?
他の絵本でもそうなんだけれど例えばカチカチ山。挿絵を見ると大抵ドヤ顔の俺が写っているわけで。俺はただ正義の報復を遂げようとしているだけなのにね。あれはさぁ、本当はもっと生きた心地がしないミッションインポッシブルな作戦だったのに全然其れが伝わってない。
火打ち石で火を付けるのなんて下手すりゃ自分が炎上。薪と国産純百パーセント毛皮、どっちが燃えやすいのか考えてごらんなさいって。どう考えたって命懸けでしょうよ。カチカチいってたのは俺の歯の方。だのにタイトルは火打ち石の音って事になってるんだからやってらんないよね。
唐辛子入りの味噌を塗るのだって良く考えたら危ないよ。狸は牙があるからキレて噛みつかれでもしたら一環の終わり。アイツらは人間を化かすくらいの生き物なんだから言ってみればプロの詐欺師なわけ。それを騙すってことがどれだけ大変かっていうところをね、もうちょっとわかって欲しいもんだよ。
最後に泥の船ね。あんなに重いのに誰も運ぶの手伝ってくれないなんて。あれ製作期間丸三日よ?狸が川に沈んだ後は筋肉痛のせいで岸に戻るのすら大変だったさ。そもそも作戦実行前に雨が降ったら大失敗に終わってたはずだし本当にラッキーだったとしか言いようがない。もうちょっと違う作戦にしませんか?って黒幕のキツネに聞いたのに却下されてさぁ。あ、コレ秘密ね。メデタシメデタシで喜んで踊ってる風に見えるあれは痛みに耐え兼ねて跳び上がってたところをたまたま撮られたスナップショットだから。正直あの話はさぁ、もっとディテールに拘って大河ドラマ並にしてくれたって良い作品だと思うよ。
もう大分お分かり頂けたと思うけれど、結構苦労もしてるのに誤解されちゃってるの。簡単にチャッチャとやってる訳じゃないんだよ。

鳥獣戯画って見たことあるかなぁ。色も塗ってない只の手抜きの絵なんだけどね。アレにも文句が言いたい。なにせ適当過ぎるしコミカル過ぎる。なんで俺が猿に酒をついだり、弓を持ったりしなきゃいけないの?自分が殺される道具を持たされるなんてシュールにも程があるでしょ。地面で転がって笑ってる所とかもね、滅茶苦茶バカっぽく見えるからヤメて欲しい。挙句の果てにはカエルと同じサイズで描きやがって。確かに俺は背が低いけれど、流石にそんなには小さくはないでしょうよ。
自分で言うのもなんだけどさぁ、どう考えたって鳥獣戯画の主役は俺でしょ。カエルだっていう人はウサギを全部消してご覧なさいよ。カエルの学校になっちゃうから。なのにあんなに露出度が高い癖に著作権なんてとっくに切れちゃって印税なんて一銭も入ってこないんだから。全く酷いもんさ。

まぁいいやぁ。お陰さまでまだまだ知名度は残ってるし、そこそこ仕事は貰えてるんだ。実は意外と忙しいんだよね。口をバッテンにしてオレンジ色の背景で写真撮ったり、大人向けの黒い網タイツのコスチュームを売ったりさ。持ってるの?ありがとう。
今日だって忙しくて時間が無いのに仕事に駆りだされてるんだよ。取り敢えず椅子に座ってさえ居れば良いっていうからこれを書いてるんだけどね。

 え、今は何の仕事をしてるのかって?
 ──目の前で水色のワンピースを着たアリスっていう女の子が裁判にかけられてる。

ケルベロス

この記事の所要時間: 1 42
 やぁやぁ、こんにちは。一つだけ聞いてみたいのだけれど一体全体何故お前は俺の胸に巣食うのか。固形でもないくせにまるで癒着でもしているかのように胸の中央にガッチリと居座るのか。俺はお前が誰しも内に秘めているものだということを知っている。だからってそんな所に固まる必要はないではないか。指先の毛細血管のその又先まで、体中に満遍なく霧散していればよいではないか。一体全体何故にそんなふうに一箇所に固まろうとするのだ。
ーー悪意よ

 何をしてもお前のせいで、自分が悪なのではないかという罪悪感に囚われてしまう。自分の考えが誤ってるのではないかと思ってしまう。俺にとって悪意の反対は善意ではない。共存でありバランスなのだ。お前と上手く付き合えるならばそれで良い。お前を追い出そうなんて考えない。善意なんてものでお前と争う気など初めから無いのだ。世の中がつまらない。そんな風に思う事もあるだろう。しかしそれを毒づいて他者の気分まで悪くすることに一体何の意味があるというのか。同調を求めれば救われるのか。

 俺は善意なんてものはお前が作り出す影なのではないかと思っている。悪意があるからこそ覆うべき何かが必要で、それに誰かが名前を付けただけなのではないか。俺が言葉を覚えたとき、お前は善意よりも先に既に俺の中に居たような気がする。実は善意もお前そのものなのではないのか。

 悪意よ、其の存在を具現化することなかれ。宿主の願いを聞き入れ給え。お前が思い知らしめようとさせる憂いなど、お前が居なくたって気付くことはできるのだ。それをお前のせいになどしたくはないのだ。今はお前に話しかける余力すら残っている。己を否定することなかれ。悪に染まる事なかれ。偽善者も偽悪者もいる世の中で生きていく。自身を見失わずに生きて行く。善意と悪意と自分自身が心を喰らい尽くさぬように手懐けながら。

 胸に腕を突っ込んで悪意を引きずり出す。握り潰してまた戻す。手にこびり付いているのはコールタール。重油の臭いが鼻につく。

狐祭り

この記事の所要時間: 1 33

夏祭りの社。

橙色の提灯の明かりがボンヤリと屋台道を照らしている。
ふと見ると狐の面がこっちを見ていた。
少し神経質そうな後ろ姿をした男が立ち止まる素振りもなく歩いている。
そんな男の後ろをちょっと離れて付いて行く南天柄の白い浴衣の女。
狐の面は女の後ろ手にひょいと乗ってこちらを見ていた。

突然女は男の浴衣の袖を引っ張り足を止めさせる。
大正眼鏡を掛けたとても気難しそうな男の横顔が見えた。
どうやら女に林檎飴をねだられたらしい。
渋々という言葉はこんな時のためにあるかのように男は懐から財布を取り出すと、林檎飴を女のために買った。

女は無邪気に喜んで林檎飴を受け取るとペロリとそれを舐めた。
白い浴衣に南天の赤が映える。赤い林檎飴は屋台の明かりで光っている。狐面の赤い隈取が更に鮮やかさを増した気がした。

男が何やら店番と話している間に女がこちらの視線に気付いてしまった。
びっくりするほど白い綺麗な顔の上で赤い口紅がニッコリと笑う。
なんだろうこの違和感は。目を逸らせたいのに逸らすことが出来ない。

男は話が済んだらしくまた歩き出した。
女は林檎飴を持った手でひらひらとこちらに手を振るとぴょんぴょんと跳ねるように男の後をついて行ってしまった。
なにかに化かされたように取り残された自分にふっと意識が戻ってくる。
夏祭りに浮かぶ白い浴衣。南天、口紅、林檎飴。
赤と白のなんだかクラクラする意識の中で一つのことだけがはっきりと浮かんだ。

あの男は喰われるのだ。
浮かんだ言葉の恐ろしさに「ヒェッ」と声が出そうになるのを堪えると遠くを行く狐の面がニコリと笑った気がした。

祭りが盛り上がってきているのだろう。
大きくなるお囃子の音だけがたった今起きた不思議な出来事を掻き消そうとしていた。

夜中にロックを聞くとロクな事を考えない

この記事の所要時間: 1 40

 一生懸命ヘタ上手に生きたいと思っているくせに全然出来ていなくて唖然とする。人からそれなりに好かれてそれなりに嫌われないように生きたいとか考えてしまったりする。

 逃げだと思う。もう自分がグルグル独りよがりで回って、周りが呆れてるのにも関わらず回り続けて、いつの間にか周りも巻き込んでグルグルいきたいと思う。他人に迷惑をかけるのはあまり好きじゃないから自分に付き合ってくれる人達のところを探してグルグル回っていきたい。兎に角集中して回っていれば、いろんな人に弾かれたり進みやすいところに紛れ込んだりできるだろうから、結局丁度いいところに収まっていくような気がする。回らなくちゃいけない。ヘタに器用になるときっと回れなくなってしまうから自分の信じる回り方を持たないといけない。曜日が分かるようじゃダメだと思う。日付もわかるようじゃダメだと思う。自分で計算できちゃダメだと思う。

  などと考える時があるんだけど少しだけ合っていてもの凄く間違っているのだろう。もう自分の声が後ろから追っかけてくるくらいのスピードで生きていきたいと思う時もあったりするけれど、家族がいたり友達がいるから死に急いじゃダメだと思うし、まぁゆっくり行こうかって思って笑ってしまう。そうだ長生きしよう。  でもこんな風に考えられる時は自分にとっては凄くいい時で、なにかやりたいことが見つかってるからきっと葛藤してるんだろう。なんだ幸せじゃないか。そしてたったこれだけのことを考えるのにも色々自分の中に矛盾があることに気付き、あぁ俺も人間だなぁと実感する。人に説明するときは筋道をたてようとするくせに内面は矛盾だらけでごちゃごちゃになっているのが凄く面白い。きっと悩んでしまう人は内なる矛盾が許せなくなってるだけなのかもしれないと考えてみたりする。

 あんまり難しいことを考えると疲れてしまうから、たまにボーッとして自分がまだ人生の旅路の途中だって思い出す事にしている。
  まだ全然終わってない。

アバラハウス

この記事の所要時間: 1 44

 自分にとって今までで一番居心地の良かった場所って何処だろう。絵描きの仲間たちと過ごした築30年2K共同トイレ風呂無しアパートも好きだったけれど、俺にとってはあらたくんの家が最高だった。あらたくんは8畳1K風呂無し築30年家賃8000円の部屋にカセットが動かないCDプレーヤーと沢山の山積みされたCDと素敵な彼女と住んでいた。色褪せた畳は縁が黒い布製で、傷やほつれやタバコの焦げ跡、消えない口紅の汚れが付いていた。部屋には家具などなんにもなくて、せんべい布団が敷いてあるだけだった。良く電気も止まっていたし、ブラジャーが転がってたり、男と女の匂いがしたり、よくも誰もいないあの部屋に1人で遊びに行ったものだと呆れてしまう。あそこには玄関がなくて窓しか無かった。玄関みたいな扉も確かにそこにはあったけれど、あらたくんに「開けるな」と言われたので俺は一度も開けたことがない。俺は家人が居ない時も、いつも開けっ放しのサッシから勝手に部屋に上がり込み、ボーッと考え事をしたり、詩を書いたり、山積みのCDの中からブランキーを探して聞いたり、目の前30センチくらいに作り出した丸い煙を見ながらタバコを吸うのが好きだった。

 とても昔のことなのであの部屋はなくなってしまったと思う。あの部屋が大好きだった俺は、頭の中に完璧に再現することができるのだけれど、実際にどうやったらあんなにヤバくて居心地のいい感じを出せるのかが分からない。そんなことを考えていたら、ふとあの玄関は開けたら大人になってしまう扉だったのかもしれないと思えてきた。あらたくんは開けてしまったのだろうか。

 あぁ。居心地のいい場所について書いていたんだった。昨夜焼酎のおかげで酩酊した俺は、あの部屋で物を書けたら最高だなと気付いてしまった。善は急げと思い立ち、頭の中に早速あの部屋をつくりあげて「アバラハウス」と名付けてみた。何か書くときにはここにいます。物好きな方は遊びに来て下さい。玄関はいつも開いています。閉まっているときなど滅多にありませんが、もしもの時はお察しください。