あたしの中には「私」がいる。
「あたしにも教えてって」お願いしている時、あたしの中の私は「どうでもいいな」と諦めている。

 私の中にはも「あたし」がいる。
「私は別にかまわないよ」なんて笑いながら言っているとき、私の中のあたしは「全然良くない」と泣いている。

 どっちがどっちだか解らないってことだけは判ってる。そんなふうに考えていたら悲しくなって、泣きそうになりながら歩いていたら、やっぱりぱんくんは土手に居た。世の中にはいろいろな人がいると思うけれど、土手でパンクの作詞をしてるのは彼くらいじゃないかな。とあたしは思う。

 私の様子を知ってか、一緒に帰ろうとぱんくくんが言った。そうだ、私は昨日カズヤと酷い喧嘩をしたんだった。
 歩いていると、ぱんくくんが不意に手を繋いできた。冷たくてあたしより少しだけ大きな手。そのままアパートの下まで送ってくれた。アパートの部屋からは私の好きなカレーの匂いがする。
「・・・じゃね。・・・また」

 寄っていきなよ、のあたしの声にも、笑ってぱんくくんは行ってしまう。玄関を開けると「ごめん、今日はカレー作ってるから」の声。
 ベッドが置いてある部屋に入ると左手首に軽い痛みを感じた。覚えのない引っかき傷がついている。ぱんくくんの有刺鉄線のブレスレットのせいだ。ぱんくくんの手首にはたまにそれが着けられてて、なんだか少し痛そうだった。
「痛くないの?」って聞いたら痛くないって言ってたくせに。ぱんくくんも嘘をつくんだ。

 あたしは引っかき傷をぺろっと舐めて服を着替える。

--夕飯は私の大好きなカレー。

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