思考が纏まらない。半ばヤケになって本当に寝てしまおうかとした時、やっと仲間からの連絡が入った。

サカ シンダ アツマリタシ R6 DR

ドクターからだった。仲間の死は一年ぶりにもなるだろう。サカが死んだ。頭の切れる元数学者。生真面目な顔とは裏腹に気さくに振る舞うアジア人だった。あれほど慎重な奴が死ぬなんて。確か俺よりも若かったはずだ。マギも自分のシナプスを開いてメッセージを確認している。今にも呻くような痛々しい顔。メッセージ右脇の既読人数が5に変わる。

N246
N245
N243

シナプスのディスプレイの上で集合時間を決めるセリが始まった。次の24時から一番右の数字を引く。243を最後に更新が止まっているから21時の集合だ。

ここからROOM6はそれほど遠くない。20時にここを出れば十分間に合うだろう。後7時間ほどの余裕がある。しばらく無かった仲間の死。今夜は悲しむ間も無く原因と方針を話し合わなければならない。病気だったのか、殺されたのか、それとも裏切られたのか。マギは自分のシナプスをバッグの中に放り投げ、退屈に不貞腐れたガキのような顔をしている。悲しむだけとは少し違う。その気持だけは良くわかっている。次は自分の番かも知れない。

とにかく仲間と会えることが決まった。貯冷庫の脇の配電盤をあけ、以前誰かがこの部屋を使っていなかったかの痕跡を調べる。わざと付け足された傷を見つけた。このエリアに酸素があったのは確か三年前の筈だ。この部屋を拠点にダイブをしたならば何か置き土産があるかもしれない。マギと手分けして床裏や天井を探す。ベレッタと弾薬、旧式のライフル銃とスコープが出てきた。運ぶにはさすがに重いが今はありがたい。仲間との物々交換にも使える。拾ったものは自分のもの。残されたものは捨てたもの。文明が進んだ今、結局人間は古代のルールを正しいものとしている。

頭の奥がキリキリ音をあげていた。警告を送りつけてきた人間を探さなくてはならない。仮に送信者が仲間以外の人間だったとしたら仲間からも危険人物とみなされかねない。サカの死が病死以外のものだった場合は余計にそうなってしまうだろう。打ち明けるなら人を選ばなくてはならない。今俺達をまとめているのはドクターだ。彼はきっと全員の安全を優先する。次に信頼が置けるとしたらアルトか。もしも仲間からでないならばあのメッセージを送ってきた理由は何だ。どうやって俺のシナプスのIDを知ったのだろうか。ここまで逃げられたことを考えると陽動や策略は考えにくい。反政府側を隠して生きている民間人、あるいは政府関係者か。同じような反政府組織の奴らだったら組織名だけは名乗るはずだろう。やはり色々とおかしい。一体何が起きているのか。得体の知れない何かに自分が巻き込まれているということを感じる。

20時になるのを待ち、マギと俺は部屋を出た。今度はダクトではなく路地裏を通って。重いライフル銃を持ってダクト内を移動するのは無謀に思えた。機械にコントロールされた夜の空気は冷たい。壁の隙間から漏れる電気網からのグリーンの光だけが路地裏にばら撒かれた小さな水溜りを照らしている。